ARETECO HOLDINGS/CMOBANKの代表取締役/高木健作のスペシャルインタビュー第2回はCMOBANKが何故マーケターを日本に増やすのか?マーケティングの価値などについて詳細に語って頂きました。
全5回の連載企画となっていますので、Vol.1をまだお読みでない方は是非、下記リンクよりVol.1からお読みください!
- CMO BANK。それはマーケティングの真理を世に広げる日本一の場所。
- 日本の未来は、マーケターを求めてる。マーケターの価値がさらに高まる時代へ。(←本ページ)
- 過去の失敗も成功も、すべて抱きしめて「いまここで、よく生きる」
- まだ知らない。マーケティングがいかに可能性に満ち溢れているのかを。
- 今日も使命を果たす。CMO BANKの仲間が世界を前に進める、その日のために。
マーケターを増やして、叶えたい。
みんなの“やりたい”が広がる世界を。
─ CMO BANKではマーケターを増やすことを掲げていますが、なぜ今日本にマーケターを増やす必要があるのでしょうか
僕の中ではマーケターを増やす必要性があるというよりも、どちらかというと「増やしたいから増やす」という考えが強いかもしれませんね。多様化し、複雑化していく社会の中で、自分のやりたいことや強みをみんなが活かして広げていく世界に憧れがあるのだと思います。マーク・ザッカーバーグの「それぞれが目的のある世界を作りたい」という話にもすごく共感しましたし、そういう世界観が好きなんです。
そしてそこにマーケティングがあると、それぞれが「やりたい」と思うことを広げる力がすごく強くなると思うんです。たとえば、僕は瞑想やマインドフルネスが好きなんですね。思考が洗練されますし、心が豊かになります。人間らしく生きるためにも必要なものだなと。「世界中の人が瞑想をすべきだ」と心から感じるほど良いものだと思っていました。
そういった思いがあり、瞑想のアプリも全部ダウンロードして使ってみたところ、Relookというアプリが一番良いことがわかったんですね。瞑想自体も良いですし、寝る時もこのアプリを使うとぐっすり眠れるんです。ただ僕自身はすごくいいなと思っていたのですが、まだ全然このアプリが広がっていなかったんですね。なので僕はそこで「これはもっと広がるべきだ」「これやれたらいいな」と思ったわけです。
そして結果的に、その会社の社長と会って会社を買って、自分たちで広げようという話になりました。自分たちならこれをもっと広げられるし、この瞑想の感覚をみんなが味わえるはずだと感じて。そういう自分が「こうだ」と思うことや熱狂したことをマーケティングの力で広げることって楽しいなと思うんですよね。
その会社の社長もとにかくそのアプリがすごく良いと思っていて、このアプリが絶対に広がるべきだし、これで世界を変えたいという思いがありました。その人間性にも共感しましたし、自分でも良いと思っていましたから、これをマーケティングの力で一緒に広げていきましょうと話して。これがマーケティングの醍醐味だなと思うんですよね。
そしてマーケターが増えたらこういった話がいっぱい出てきて、もっと面白いだろうなと思うんです。これはCMO BANKの一つのビジョンにもなりますが、卒業生がみんなこの感覚を持って、いろんな場所でいろんなものを広めていき「こんなビジネスやりました!」という話がたくさん上がってきたらすごく楽しそうだなと。それがマーケターが増えてほしいと思う理由ですね。
まだ、気付いていない。
マーケターの本当の価値に。
─ 世の中でマーケティングはどのように評価されていて、これからどうなっていくだろうという展望をお聞きしたいです。
「マーケティングが大事」という考えは、ほぼ全ての経営者が同意するような時代になってきていると思います。感覚としてはこの20年くらいでその機運が高まっているんじゃないですかね。
ただ重要性を理解している一方で「マーケターを採用しよう」「マーケターにもっと給料払おう」という企業行動は全然追いついていないと思います。今のステージとしては、マーケターが大事なのはわかってるけど、どうしたらいいのかわからないという状況だと思いますね。僕としてはマーケターは今よりもっと評価されるべきで、もっと給料をあげるべきだと思います。何なら「会社の利益や売上は、マーケターの質や量にも比例する」と言ってもいいくらい、マーケターは大事な存在だと。
今どんどんマーケターの需要が上がってきている感覚は他の経営者も持っていますし、マーケターがいるといいと理解し始めている会社も増えてきています。なので、トレンドとしてはこれからもっとマーケターの評価が上がったり、働く場所が増えたり、求める会社が増えると思います。そしてもちろん、僕らCMO BANKがそういったトレンドをより加速させる、大きくさせる役割を担っているとも思っています。
また会社だけの話ではなく、世の中の情勢やビジネスの展望の中でもマーケターはさらに必要な存在になってきています。
背景として、需要と供給が細分化されているというのもありますし、ビジネス自体も細分化しています。ここでいうビジネスは商品・サービスのことを差しますが、その数が圧倒的に増え続けているなと。たとえば50年前に世界の商品・サービスの数が100だとしたら、今100が1万とか10万になっている。それくらいビジネスの数って増えていると思います。
それは、多様化した需要やニーズに応えるために、どんどん新しいビジネスが生まれ続けているわけですが、その全てのビジネスにマーケターは必要。なので必然的にマーケターの数も増えていくでしょうし、より重要度も上がってくると思います。
─ 起業家の人やベンチャー企業だけではなく、大手企業で働いていてもマーケティングは必要でしょうか。またマーケターを重宝して成功している大手企業は何がありますか。
会社が大きくても新しいビジネス・商品を作ることはもちろんありますので、マーケターは必要だと思います。また既にある商品も世の中の流れ、需要の変化に合わせて少しずつ見せ方や商品設計を変え続けないといけないので、新しいものを生み出す時以外にも全部必要なのかなと。
実際にマーケターを重宝しているからこそうまくいってる会社は「アップル」が完全に当てはまりますね。マーケティングを活かして、スティーブ・ジョブズがやりたいと思っていることを、世の中の需要と結びつけて作っています。ジョブズはパソコンが人類を変える素晴らしいものだと思っていて、パソコンをもっとみんなが手元に常に持ち続けるべきだという想いがありました。それをiPhoneやMacbookという脳をバックアップする新しい形として多くの人の手に渡らせることに成功しています。色んなプロダクトを見ても、全部マーケティング的発想がすごく強いなと思いますね。
“ものづくり大国” 日本は
マーケティングが下手かもしれない、でも。
─ ここまでは世界的なトレンド、世の中の大きな流れとしての話でしたが、今マーケティングをやろうという時に、日本人の有利・不利な点があれば教えてください。
僕の感覚では、日本はマーケティングの上流部分がすごく下手で、下流部分は得意な気がします。つまり広告やCMなどの下流のクリエイティブ面は世界ダントツでクオリティが高いですが、そもそもどういう需要にどんな商品を届けるかといった上流の設計はすごく下手だということです。
これには2つの理由があります。1つ目は日本が「単一民族」という点です。他の国はすごく民族が多く、多様的な国民なのでマーケティングをちゃんと考える必要があったわけです。一方で日本は、単一民族のためそもそも需要があまり細分化されていませんでした。また過去に一回戦争で全部ゼロになってみんなの所得がリセットされ、単一的な状況になった時代背景もあります。家電の三種の神器をみんなが欲しがるとか。そういった背景があり高度がマーケティングを必要とされる機会が少なかったというのがあります。
2つ目の理由は、良くも悪くも日本は技術力が高かったので、商品を作ってしまえば需要を選ぶのが簡単というビジネスが結構あったからです。たとえばソニーは「そんなに小さくなるんだったら大概みんな欲しがる」というウォークマンを作れたり、半導体なども明らかにみんなが欲しがるものを小型化して作れたわけです。
よく日本は昔から「ものづくりは得意だけどマーケティングは下手」と言われますよね。それはこのように技術力があり、作っちゃえば勝ちみたいなビジネスを結構やってきた背景があると思います。世界の中でイノベーションを最初に起こして、そこの差がある時はマーケティングそんなにしなくても大丈夫というのがあったのかなと。
ただ今この世界は1社が革命的なプロダクトを生むことはだいぶ難しくなってきています。アップルなどはまさにそうですが、基本的に色んな会社の技術の組み合わせによってプロダクトを生み出す流れになっているんです。
その時に必要なことは、どの需要に対してどういう供給をするのかというデザイン。「こういう需要があるから、このテクノロジーを世界中から集めてきて商品を作ろう」という発想が大切です。ですが先ほどの日本を代表する会社ソニーは「自分たちはこういうことができるから、これをどう使おう」というプロダクトアウト・技術思考から抜け出せていない気がしますね。もともとそういう技術思考でうまくいってたので、なかなか変われない部分があるのだろうなというのが僕の思っている見立てです。
日本人だからこそできることを。
マーケティングに必須の「センスと感性」
─ そんな日本人がマーケティングを体得できるのでしょうか。
僕は逆に、すごくポジティブに考えています。日本人は複雑なものを複雑なまま扱うのがかなり得意なんですよね。日本は文化も複雑ですし、四季もあって感性が豊かだと思うので。今世界の中には色を3色しか認知していない民族もいるらしいです。生まれてくる環境によって感性が養われるということを表しています。
たとえば発展途上国の看板などを見たらよくわかると思うんですが、日本人からしたら洗練さが足りないと思いますよね。色使いとかも変ですし。それで良いと思っているということは感性が足りないということだと思います。
その点、日本人はすごく感性が豊かです。さらに西洋の0か100かという考え方ではなくて「どちらもあるよね」といった、極端ではなく裏返しで存在するみたいな東洋的な考え方もできます。なのですごくデザイン思考、クリエイティブな思考に向いてる民族だと思っていますね。そういう意味で、ロジカルシンキングもできると思いますし、マーケティングに向いてる人がすごく多い気がします。やり方さえわかれば結構強いんだろうなと。
正直言って、マーケティングにおいてはこの「センスや感性」という部分はめちゃんこ大事です。感性やセンスというのは「どれだけ情報を持っているか」と「その情報をいかに解像度高く持てているか」によって決まります。こういったことを積み重ねてきた人はやっぱり強いです。その感性やセンスは下流の表現レイヤーのクリエイティブにも、上流のコンセプトのレイヤーにも表れると思いますね。
日本の未来は、マーケターを求めてる。
マーケターの価値がさらに高まる時代へ
─ 最後に高木さんにとって、マーケターの価値とは何でしょうか?
マーケティングの力があれば、自分がやりたいと思ったことや、これは絶対に良いと思った素晴らしいプロダクトを、この世の中に広めることができます。それってみなさんが思ってる以上にすごい力ですし、とても楽しくて面白いことです。
このCMO BANKを通じて卒業生が優秀なマーケターになり、それぞれが自分の強みを活かしてやりたいことを世の中に広めていけることを、僕自身すごく楽しみにしています。
また他の経営者や会社もマーケターの重要性を理解し始めています。そして今この瞬間も多様化した需要に応えるために新しいビジネスが次々と生まれています。ですから今後もっとマーケターの評価が上がり、高い報酬を払ってでも必要とする会社が増えていくでしょう。
幸いにも感性豊かでクリエイティブな思考を持つ、マーケターとしての素質のある日本人に生まれたわけですから、より多くの人がこのマーケティングの力を手に入れて自分のやりたいことや強みを広げていく世界になってほしいと思いますね。
高木健作 プロフィール
株式会社ARETECO HOLDINGS 代表取締役
株式会社CMO BANK 代表取締役
1988年兵庫県生まれ。大阪大学 経済学部(中退)
大阪大学在学中にマーケティング支援事業で起業。2013年にはSingaporeへ移転。月間5,000万PVメディア事業立ち上げ。
その後、旅行メディアを株式会社DeNA、美容メディアを株式会社ベクトル(子会社)へとそれぞれ事業売却
現在起業家 兼 エンジェル投資家 として11社の創業に携わり、2019年3月より株式会社ARETECO HOLDINGS 代表取締役に就任。同年、株式会社CMO BANKを立ち上げ代表取締役に就任。